母から娘へ、受け継がれる伝統の味〜三原なんとぅ〜

2020.10.05

今回は、三原区にある「きくおばーの味三原なんとぅ」の久志初美さんのところへ。


(前回の記事「春おばーのなんとぅ餅編はこちら



きくおばーの味三原なんとぅの加工所

うちは昔っから薪で焚いてて、2時間も3時間も焚くからガスだといくらあっても足りない。薪の方がいいんですよ〜。


とお話してくれたのは、きくおばーの味三原なんとぅの久志初美さんです。

お伺いした時、ちょうどなんとぅを作っている真っ最中で、加工所からは煙がもくもく。

レトロな釜がいくつも並べられていました。

一つの釜で100個のなんとぅ が作れるそうです!


材料はシンプルに、もち粉と黒糖のみで作られています。

いろいろ試したこともあったけど、孫たちもこれが美味しい!と喜んで食べてくれるのでうちはこれだけ。

釜での作り方もそうですが、レシピもお母さまであるきくおばーの頃から全く変えていません。

釜で蒸して、冷まして、切って、一つずつフィルムで巻いて…、全て手作業。


三原なんとぅは店舗はもたず、委託販売と注文販売のみです。

8年前にきくおばーから、なんとぅ作りを引き継いで、初美さんが加工所を立てて営業許可を取り、今の形に。

それまではきくおばーのなんとぅファンのご近所さんから頼まれて、きくおばーが受注ベースで作り続けていたそう。

もともと外で働いていたんですけど、母が80手前くらいで足を痛めて、それで引き継ぐことにしたんです。

ご近所の方たちにもこれ(この味)なくしたらもったいないよ〜、やったらいいさ〜!と言われたこともあり、実際に美味しいし、これも仕事になるんならいいか、と思って。


そんな風に話してくれる初美さんの表情は柔らかく笑顔が素敵です。

きくおばー


そして、ちょうどきくおばーもご自宅にいらっしゃってお話を伺うことができました。


母娘なので当たり前ですが、優しい笑顔がそっくり!

昔はなんでも自分たちで作ったんだよ〜、もちも豆腐も味噌も、今みたいに買うところなんてなかったしねぇ。

昔はこの辺の家もみんななんとぅも作ってた。今はもうやめっちゃったみたいだけど。


周りのお家が、次第になんとぅ作りをやめていく中で、お正月や慶事にきくおばーのところに注文が入るようになったそう。
年末や行事のタイミングはいつも大忙しとか。


きくおばぁーのなんとぅを楽しみにしてくれている常連さんがいる。


そんな経緯もあり、初美さんがそんな想いごとなんとぅ作りを引き継いでくれていることを嬉しく思っているようでした。

初美さんに今後のことを伺うと“この先は誰もやらないんじゃないかな〜”とのことではありましたが、こればっかりはわからない!


『春おばぁのなんとぅ店』も『きくおばーの味三原なんとぅ』もやり方は違えど、“母の味をつなぐ”という思いは一緒。


“なんとぅ”への愛がたくさんつまっています。

そんななんとぅはどちらもわんさか大浦パークで購入可能です!


ちなみに、

那覇方面では、“なんとぅ”=「年頭」と書かれ、お正月に食べるもち菓子です。

もち粉と黒糖、味噌、ピパーチ(八重山胡椒)をあわせて作られるのが一般的なようですが、

名護東海岸では、お正月に限らず、お盆や清明祭・慶事など家族が集まる行事でよく食べられ、引き継がれている味も少し違います。


どのようにやんばるに伝わり文化となったのか、歴史を紐解いていくのも面白いかもしれません。


最後に三原なんとぅで、ちょっとかわったなんとぅの美味しい食べ方を教わったので、ご紹介。


右はフライパンに油を引いてなんとぅを焼いたもの。外はカリっ!中はトロっ!で美味しかったです。

左はきな粉をかけたもの、わらび餅のようで涼しげです。

いつもとは違った味を楽しむことができました。皆さんもぜひ!