”小さな生きる力”を育むふるさと学習
2021.03.01
私たちは、自分の”ふるさと”の特徴をどれだけ人に伝えることができるでしょうか?
作物や自然・文化・人・街並みなど、場所は違えどその土地その土地の個性があるはずです。
ずっとそこで暮らしていると気づかない、他所からみたらすごく魅力的な特徴があることも。
名護東海岸にある久志地域には、そんな”ふるさと”の個性を、大切な宝物を、子どもたちに伝えていこうと取り組んでいる学校があります。
久志地域の特徴である、大浦マングローブ林の中を散策して生態系について学んだり、ウミガメが産卵しにくる浜で環境について学んだり、各集落を周って地域の自慢や魅力を大人たちに聞いて回ったりするなど、
学校と地域、そしてコミュニティ・スクール(※1)のコーディネーターが協働で、子どもたちとともに”ふるさと学習”を作り上げていきます。
今回はその中の一つをご紹介。
この地域で大切に守り育てられてきた伝統野菜”二見あかカラシナ”を題材としたふるさと学習を。
じゃがいもやトマトなどの野菜も授業の中で育てたりはしますが、
ふるさと学習では、久志地域の伝統野菜である”二見あかカラシナ”を学校で栽培します。
二見あかカラシナについて詳しくはこちら。
沖縄の在来種であるあかカラシナ。
今では葉脈が赤くない「西洋カラシナ」が主流となり、あかカラシナを栽培する地域は多くありません。
地元のおじぃおばぁに話を聞くと、子どもの頃から当たり前にあった”あかカラシナ”
久志地域にある二見区では、戦時中も、あるおばぁがこの種を守り、戦後の食糧難をしのいだという歴史もあります。
当たり前に地域にあった”あかカラシナ”も、少しずつ姿を消していっているのが現状です。
この在来のカラシナの”種”を後世につなぎたい。
そんな想いで立ち上げた二見あかカラシナ生産組合を中心とした地元の農家さんが子どもたちに歴史や想い、栽培方法を伝え、土作りから一緒に行います。
草取りから始まり、堆肥を入れて土を耕し、普段自分たちが口にしている作物を作るのにどれだけ農家さんの手間ひまがかかっているかも合わせて体感。
種を撒いて、毎日水をあげて成長を見守り、みんなで収穫。
採れたてを味見して「から〜い!!」「おいしい!」といういろんな声が聞こえました。
お家に持って帰ってどんな風に食べようか?と考える子どもたちの姿が印象的でした。
お父さんやお母さんに「二見あかカラシナのことお話しして教えてあげてね!」とふるさと学習の地域コーディネーターがお願いしたら、後日、お家でお話ししたことや食べてみた感想などを楽しそうに教えてくれました。
このふるさと学習への想いを、緑風学園の伊波和子校長にお伺いしてきました。
伊波校長も出身はこの久志地域。
あかカラシナも子どもの頃はお家や周辺に当たり前にあったといいます。
子どものころは自分の家で作ったものを食べることが当たり前でした。
お手伝いするのも当たり前。
種を播いて、水をあげて間引きをして、花を咲かせたら種子をとってまた次の年にまく。
その「命のリレー」をしっかりと幼稚園や小学校の時から体験させてもらっていたんです。
地域の宝物である”あかカラシナ”も当たり前ではなくなってきた、育てて食べるという習慣もなくなってきた、”種”がなくなると同時に”習慣”もなくなってきています。
自分たちの力で生活を豊かにすることを、
なんでも買える今の時代の”物の豊さ”だけではなく、”心の豊かさ”を育みたいと思っています。
子どもの頃の”豊かな体験”はこの子たちの将来につながっていく。
この体験が仕事につながることもあるかもしれない。
いろんな体験をいろんな子どもたちがすることで、自分の得意なこと好きなことやりたいことを見つけていくことができるでしょ。
日常の生活の経験から得られる”小さな生きる力”を、社会と学びはすベてつながっています。
ある意味、このふるさと学習は子どもたちへの命の種まきですね。
校長は、種取りの様子まで子どもたちに見せられるように、と、授業としての取り組みが終わった後も、一部苗を残し育てています。
それが命のリレー、作物を育てることができたら、食べ物に困ることもないしね、と。
自分の”ふるさと”を知ることで、地域の宝物が見えてくると同時に、”生きる力”も育むふるさと学習。
これからの時代を子どもたちがたくましく生きていけるように、と願いも込められていました。
ちなみに、緑風学園の学校運営協議会(※2)は令和2年度「地域学校協働活動」推進に係る文部科学大臣表彰の受賞したそうです。
(沖縄県名護市久志地域ポータルNavi「風なごむ村の島時間」より)
緑風学園に通う子どもたちが大人になった時、この体験がどうつながっていくのか、今からとても楽しみです。
※1 コミュニティ・スクールとは
保護者や地域住民が学校運営に主体的に関わることができる学校のことです。
そのために「学校運営協議会」という組織を設置している学校のことをコミュニティ・スクールと言います。
この組織があることで、学校運営に地域の声を生かすことができ、地域と一体となって特色のある学校づくりを進めることが出来ます。
※2 学校運営協議会とは
コミュニティ・スクールを推進(地域と協働する学校づくり)について【協議する場】です。教育委員会から委託を受け、地域の方・保護者・学校職員で構成されている組織です。【協働して活動する場】を「緑風ファミリーネット」と呼んでいます。