「15才は地域の担い手」を目指して。なぜ中学3年生が地域商品のラベルシールを作るのか。

2021.11.19

「社会に開かれた学習過程」
「地域課題解決型授業」
「生きる力」「探求学習」
「学校運営協議会」「コミュニティ・スクール」
そんな言葉が学校教育で多く見られるようになってきました。


「具体的にどんなこと?」
「それって私たちの暮らしに何か関係あるの?」
ということについて、沖縄県名護市東海岸「久志地域」を事例に紹介していきます。


学校と地域が連携した商品開発の実践は多くあるかと思いますが、
なぜ、久志地域でこういった取り組みをするのか。
この記事では、目的についても詳しく紹介していきたいと思います。

「社会に開かれた教育課程」と地域づくり。それを実施する「コミュニティ・スクール」とは。


そもそも、学校教育がなぜ「社会に開かれ」たり「地域と協働」するのか。
それは、改訂された「学習指導要領」の基本的な理念が「社会に開かれた教育課程」と書かれているからです。
ではなぜそう書かれるようになったのか。

社会のつながりの中で学ぶことで、
子供たちは、自分の力で人生や社会をよりよくできるという実感を持つことができます。
このことは、変化の激しい社会において、
子供たちが困難を乗り越え、未来に向けて進む希望や力になります。
そのため、これからの学校には、社会と連携・協働した教育活動を充実させることがますます求められます。

(文科省HPより)
学校と地域でつくる学びの未来(文部科学省)より


「社会に開かれた教育課程」はどんなことをしていくかというと、

①よりよい学校教育を通じて、よりよい社会を創るという目標を、学校と社会とが共有します。
②これからの社会を創り出していく子供たちに必要な資質・能力が何かを明らかにし、それを学校教育で育成します。
③地域と連携・協働しながら目指すべき学校教育を実現します

(文科省HPより)


つまり「社会に開かれた教育課程」を実施することは、
学校づくり=社会(地域)づくりとなる、ということです。


地域づくり、地域活性化という視点では、
国の施策として「まち・ひと・しごと創生ビジョン」「地域おこし協力隊」「都市農村交流」「田舎で働き隊」などが取り組まれてきました。
地域の拠点としては「道の駅」や「まちづくり協議会・NPO団体」等が中心となって実施してきた地域づくり。

こういった産業としての地域づくりだけでなく、教育の側面からも地域づくり・社会を創造することが求められ始めています。


このような「社会に開かれた教育課程」を実施するための仕組み・制度として
「コミュニティ・スクール」があります。

コミュニティ・スクールとは学校運営協議会を置く学校。
学校運営協議会とは、地域住民や保護者等が学校運営に参画し、「熟議」を通して、目標やビジョンを共有することによって、
地域と一体になって特色ある学校づくりを進めていくことができる、法に基づく仕組み

(文科省HPより)


沖縄県名護市では、令和4年度から市内にある小中学校すべてがコミュニティ・スクールとなります。

イラスト:なかちしずかさん

久志地域にある「緑風学園」では、平成30年からコミュニティ・スクールが導入されました。
「ふるさとを愛し、たくしく生き抜く、緑風の子の育成」という理念を掲げ、
地域を題材とした9年間の「ふるさと学習(総合的な学習の時間)」と英語教育を柱に、学校づくりを行っています。
令和2年度には緑風学園の地域学校協働活動は、文部科学大臣表彰を受賞しています。

 

15才が地域にできることを。地元直売所の人気商品のラベルを作成しました。


緑風学園の生徒数は9学年(小中一貫校なので、中学3年生を9年生と呼びます)で、170名程度。
1学年が20名前後の小さな学校です。
その緑風学園のある10の集落は、過疎高齢化が著しく進む地域です。
しかしながら、地域交流拠点施設・直売所「わんさか大浦パーク」を中心に、地域活性化に向けて地域住民が主体となり、様々な地域づくりに関する取り組みを実施しています。

わんさか大浦パークは、緑風学園の生徒たちには身近な直売所で、ふるさと学習(総合的な学習の時間)でも、マングローブ散策やカヤック体験等で関わりの多い施設です。

緑風学園はカヤック体験やマングローブ散策で、
わんさか大浦パークの施設利用をしています。


今回は9年生の美術の授業「魅力が伝わるパッケージ」という単元で、
地域の直売所「わんさか大浦パーク」の人気商品「シークヮーサージュース」のラベルデザインを行うことになりました。

1人1台配布されている、個人用パソコンを用いてデザインをしています。


実際にシークヮーサージュースを試飲し、わんさか大浦パークのスタッフの方へ商品や広報したいポイントについてアンケートを行い、
5グループに分かれ、それぞれが役割分担をしながらデザインを考えました。


「久志地域で育ったシークヮーサー、ということを伝えたい!」
「子どもからお年寄りまで、みんなに愛されている味ということ伝えたい!」
「飲んだ時、耳の後ろがキューンと酸っぱかった味を伝えたい!」


そんな声から、5種類のラベルが生まれました。

作成したラベルをそれぞれがプレゼンし、生徒・わんさか大浦パークのスタッフの投票で1つに選びました。
ラベルをデザインするだけでなく、販売するときのことを考え、店頭に掲示するポスターも作成しました。


わんさか大浦パークのスタッフからは生徒たちへ、授業でお話し頂きました。

わんさか大浦パークのシークヮーサージュースは、ドリンクの中で人気No.1商品。そして商品になるまでに農家さん、しぼる人、ジュースにする人、宣伝する人、販売する人など、多くの人が関わっています。そのラベルデザインはとっても責任ある仕事。
今までシークヮーサージュースのカップにはラベルがありませんでした。今回緑風学園の皆さんのおかげで、より魅力を伝えることができると思います。
ラベルをデザインすることは、いろんな能力が必要。直売所ではレジの業務だけじゃなくて、お客様の気持ちになって商品開発、ラベルデザイン、広報発信なども行っています。
この機会をきっかけに地域の商品のことや仕事のことにもぜひ目を向けてほしいです。ありがとうございました。

わんさか大浦パーク代表 深田友樹英さん より


生徒達からは以下のようなコメントがありました。

緑風学園は、地域との関わりが深い学校です。地域の方にお世話になることも多くあります。
そのため私達は、この授業を通して少しでも地域に貢献できたらという思いで、真剣にデザインを考えました。
この授業を通して一つの商品を作るのに沢山の人が関わっていて、その人達の思いを一つのデザインにまとめるのは難しいことだということがわかりました。
このような貴重な経験を与えてくれた地域の方に感謝し、これからも色んな形で地域と関わっていけたら良いなと思います。

緑風学園9年生 生徒より

 

緑風学園は、小中一貫校で地域の方と交流するコミュニティ・スクールでもあります。

お世話になっている地域の方への感謝を恩返しするためにも、私たちはこの授業を休み時間なども利用して、一生懸命にデザインしました。

一人ひとりデザインにかける思いは違くて、一つにまとめるのは難しかったですが、各グループいい案ができました。

私達がデザインしたラベルを楽しみんがら、どうぞ、シークヮーサージュースをお楽しみください!

緑風学園9年生 生徒より
緑風学園9年生が作成したラベルデザインとポスター
実際にどのデザインが選ばれたかは、購入してからのお楽しみ♬


「15才は地域の担い手」
コミュニティ・スクールを推進する中で、他地域の事例からそんな言葉を学びました。

学校での学びを通して「地域の担い手」の一員となることで、身につく力や将来の一歩に繋がるきっかけがあるはずです。
久志地域でも、中高一貫校での9年間の学びを通して、
地域の担い手を育んでいけるような、学校と地域の連携・協働を進めていきたいと思います。


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わんさか×緑風9年生「シークヮーサージュースラベルデザイン」
2021年11月20日(日)~ 300個限定
わんさか大浦パーク 店頭にて販売します。
数に限りがありますので、ご了承ください!
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