葉脈が赤くて「はなぱんちゅん」な辛味。老夫婦がそのおばぁから引き継いだ二見あかカラシナ。
2019.03.29
名護市街から東海岸・二見へ向かい、旧道を通ってわんさか大浦パーク方面をめざす時、道路下の崖といってもいい土地に、色鮮やかなセンネンボクやクロトンが植えられているのが目に入ります。あまりに見事で、二見の婦人会のようなグループが植えておられるのかなぁ、だとすればいい地域なんだろうなぁと、いつも想像していました。
今回の「二見あかカラシナ」取材で、それらを植えている手が、1組の老夫婦だとわかりました。
好きだから楽しみで。向こうからみんなが見えるようにして。花見みたいにきれいさね。あんまりきれいだから車で下までまわってきましたよっていう人もいるよ。どうぞ見てください。
と、85歳の比嘉君枝さん。
二見あかカラシナは二見地域に残る島野菜で、葉がほんのりと赤いカラシナ(シマナ)です。
君枝さんの夫・松繁さんは、幼い頃に父親を戦争で亡くし、若かった母親は松繁さんを祖父母に預けたといいます。
祖父母の段々畑で育てられていたあかカラシナの種は、戦争の時も台所の奥で隠すように大事に保管していたそう。
上等のカラシナから種を残して。戦後は自給自足だから、近所の人にも分けてね。この種はばあちゃんが残したくゎーまーが(子孫)です。
73歳でお祖母さんが他界した後は、君枝さんと松繁さんが種を引き継ぎました。
近頃のカラシナは辛味の少ないものも多いなか、「はなぱんちゅん(鼻にくる)」おいしさです。
君枝さんと話をしていると、ヤギたちが「おなかへった!」といっせいに鳴く声が響いてきました。
飼料はあげず、毎日1回は草刈りをして、畑に残った野菜や大きくなり過ぎたクロトン、台風で倒れたバナナの葉なども、ヤギのごはんに。堆肥は畑に。
うちは捨てるものないよ。
少し前まではウコンなどを会社やJAと契約して出荷していたそうですが、
70トンくらい出しよったけど、掘らないといけないし、もう身体がもたない。この歳ではよ、年金で食べながら、楽しみでつくってる。野菜はいっぱいあるし、500円分お肉を買ってきてね、出汁にして食べたらいいから。
出荷先を「わんさか大浦パーク」だけに限定したのは、家から近く、几帳面な「うちの人が毎日行って、品物がちょっとでも悪くなっていたら引き上げるから」でもあります。
ふだんはカラシナをどうやって食べているのかとたずねると、やはりまずは少しの塩でチキナー(塩漬け)にするとのこと。
うちの子どもたちは、シーチキンを入れたらね、カラシナの値打ちがなくなるって言う。『なんでせっかくおいしいカラシナにシーチキン入れるね? 母ちゃん、ぜったいそのままがおいしいんだよ』って。うちの子たち、みんな健康だよ。子どもが多かった(7人)から、ひんすーむん(貧乏)で、おいしいのはあげきれなかったからさ、みんな野菜。野菜で育ってる。外のひ孫まで入れたら50名あまる。大家族よ。
沖縄には「シーミー」といって、二十四節気の清明の期間に行う先祖供養の行事があり、大きなお墓に親戚じゅうが集まって重箱料理を囲みます。
シーミーやったら、テントふたつやってシンメーナービ(沖縄の伝統的な大鍋)に中味(豚のモツ)汁つくる。二見の部落より多い(笑)って言われるさ。それが私の楽しみ。自分から広がって、みんなが集まって、みんな健康で、ばあちゃんこれが一番楽しみよ。
そんな二人が受け継いできた二見あかカラシナの種は、まだ細々とではありますが、地域の人へと広がりつつあります。