100年つないで、これからも。二見あかカラシナが紡ぐ「はなぱんちゅん物語」

2022.02.12

世界中で、気候や風土に合った様々な伝統野菜が失われつつある中、
沖縄県名護東海岸 久志地域では、
伝統野菜にまつわる「物語」を大切に、未来へとつなぐための取組が行われてます。


その名も「はなぱんちゅん物語」。


今回の記事ではそんな伝統野菜「二見あかカラシナ」が紡ぐ物語です。

「はなぱんちゅん物語」とは


「はなぱんちゅん物語」とは、
久志地域の伝統野菜である二見あかカラシナのチキナー(塩漬け)と
同じくこの地域の特産品である大川のアグーのひき肉を
島唐辛子、ニンニク、ごま油と炒めて作った瓶詰め商品です。

二見あかカラシナの「はなぱんちゅん(鼻にツーンとくる)」辛味が、
ごはんにぴったり。島豆腐や沖縄そば、卵焼きにもよく合います。


「…え、物語じゃないの?商品?」と思いますよね。
そうです、商品なのですが、この商品が生まれるまでには、物語があるのです。

「はなぱんちゅん物語」ができるまで。


▼はなぱんちゅん物語の原材料である「二見あかカラシナ」についてはこちら


葉脈が赤くて「はなぱんちゅん」な辛味。老夫婦がそのおばぁから引き継いだ二見あかカラシナ。


↑この記事にもある通り、二見あかカラシナは、地域で大切に守られてきた伝統野菜です。

”昔はさ、この辺のカラシナはぜーんぶあかカラシナだったんだよ。珍しいものじゃなかった。いつからかな、全然見なくなったんだよね。”


地域出身・在住、60代のお母さんより
畑で育つ、二見あかカラシナ


この沖縄在来のあかカラシナは、
昔から久志地域に暮らす人たちにとって当たり前に生活の風景の中にあり、
種をまき→育て→花が咲き→種をとって→また種をまく、
という循環が、暮らしの中にありました。

それが近年、
種を簡単に手に入れることができる西洋カラシナが主流になってきたこと、
地域の高齢化に伴い栽培をする人が少なくなってきたことで、
なくなってしまってもおかしくない現状です。

”あかカラシナは、西洋カラシナに負けちゃうんだよね。別にしておかないとぜーんぶ緑になっちゃう。(西洋カラシナは葉脈が緑、あかカラシナは葉脈が赤)”


地域内70代農家さんより
二見あかカラシナは葉脈が赤いことが特徴。


葉野菜だと生産・出荷の時期が限られたり、
遠くに発送するのは限界があったり、
こんなに大きく育ってしまったものは商品になりづらい。

収穫時期によってはこんなに大きくなるものも。


「大切な伝統野菜を100年先も地域に残していきたい。」
「多くの人に二見あかカラシナを知ってもらいたい。」
「美味しいから食べてほしい」
「二見あかカラシナが地域の誇りになったら嬉しい」


そんな気持ちから、地域の直売所・拠点施設のわんさか大浦パークで加工し、商品化を行うことになりました。

二見あかカラシナを未来につなげるために。


わんさか大浦パークでは、二見あかカラシナを未来へとつなげていくために大切にしている取組があります。
その一部をご紹介します。


①農家さんの想いを大切にする。

全部ね、大切に育ててるの。味は美味しいんだよ。
だけどねお店には出せないからさ。使ってもらえたら嬉しいんだよ。

二見あかカラシナを育てる 比嘉君枝さんより
二見あかカラシナを出荷する比嘉君枝さんとわんさか大浦パーク調理スタッフ


美味しいこと、大切に育てていること、それが生きがいになっていること。
日々の農家さんとのゆんたくからたくさんのことを教えてもらっています。

きみちゃんおばさん(比嘉君枝さん)とは長い付き合いだし、とっても身近な存在。

納品してもらった野菜を洗っていると、どれだけ丁寧に育てられているか、
丁寧に収穫されているかがよく分かる。全然違う。
農家さんって本当にすごいなあと思いながら、加工させてもらってます。

わんさか大浦パーク 調理室スタッフ 宮城ひかるさんより



②地域内で、二見あかカラシナを育てる、学ぶ。


たくさん商品を作って、売る。
100年つなぐためにはその仕組みももちろん大事ですが、
地元の小中学校 緑風学園で、
子どもたちの学びのために
毎年二見あかカラシナを育てています。

▼緑風学園の授業についてはこちら


”小さな生きる力”を育むふるさと学習


「種をまき→育て→花が咲き→種をとって→また種をまく」
収穫して食べるだけではなく、その一連の循環も行っています。

この写真の9年生(中学3年生)は、二見あかカラシナを育てて2年目。
一連の作業も慣れたもので、農業のこと・進路のことなど、
指導してくださった農家さんと笑いも交えてゆんたく(おしゃべり)する場面も。

手間もかかるけど、ちゃんと真っ直ぐ種をまいて、隙間ないようにネット張って、水もしっかりやれば、ちゃんと育つからね。
農業はしっかりやってれば、それだけ結果が出るよ。勉強と一緒!
ほら、このチームのネットが一番上等さ!笑


二見あかカラシナ生産組合 比嘉晴さんより

9年生の畑だけど、晴さんと作った畑だから、晴さんの名前も書いておこう!
この地域の名物を聞かれたら「二見あかカラシナ」て答えるよ。

緑風学園9年生 生徒より
9年生の畑の看板を書いている様子

③多くの人に届ける。

美味しい商品をつくるだけでなく、届けることもとても大事。
はなぱんちゅん物語のパッケージは、名護出身のデザイナー宮城かおりさんと一緒に作っています。

パッケージの打ち合わせをする宮城かおりさん(左)とわんさか大浦パークスタッフ

はなぱんちゅん物語は、1人で作ってないな、と感じます。チームだな、と。一緒に作り上げていけてるな、と思ってます。
地域の方と県外から移住されている方が一緒に、昔からの名護に向き合ってくれていて。自分は名護出身なのにあかカラシナについて全然知らなくて。

デザイナー 宮城かおりさんより
パッケージのデザインだけでなく作業工程についても検討しました

「ちゃんとしないとつながっていかないよ」という言葉を聞いて、本当にそうだと思いました。
ちゃんと美味しいんだから、ちゃんとやらないと。そんな気持ちでやっています。

はなぱんちゅん物語を通して、生のあかカラシナも食べてみたいな、どんな地域なのか、ということに目を向けてもらえたら嬉しいです。

デザイナー 宮城かおりさんより

 

二見あかカラシナの種。二見あかカラシナ生産組合が大事に守っています。

二見あかカラシナの種は、こんなに小さな種。
戦火で途絶えてしまってもおかしくなかったこの種が、
今でもここにあること。繋いでいる人たちがいること。
みんなが想いが詰まった「はなぱんちゅん物語」。

ぜひ一度、ご賞味ください。

Information

▼はなぱんちゅん物語のご購入はこちら