地域がこうなってほしいというのがあるから「むしゃむしゃ動いている!」

2019.03.29

ライバル意識じゃないですけど、マンゴーのほうがパインより価値があるイメージじゃないですか。絶対違うわけ! マンゴーはどこでもできるわけ。国産のパインができるのは沖縄でもやんばる(本島北部)と八重山だけですよ。スーパーは毎日棚にないといけないから、旬がない。酸っぱいイメージでしょう。でも、内地から来て沖縄の5月から8月くらいまでのパインを食べたらびっくりするわけですよ。農家としてはその感動を届けたい。


パイン農家の藤原邦彦さんは朗らかに話しながらも、パインののことになると語調に熱がこもりました。


藤原さんは那覇市で生まれ育ち、名護東海岸出身のパートナーとの結婚を機に、コンピューター会社の勤め人から子どもの頃からあこがれていた畑人へと転身しました。
はじめは葉野菜を育てていましたが、「今日収穫するとその時点で種を落とす」回転の速い葉野菜のリズムは、ほぼ一人での農業には無理があると感じていました。
今から約20年前のこと。パインの輸入で沖縄産の価格が暴落し、危機的な状況のなか、パインを栽培する人材が求められていると聞いたのが、藤原さんがパイン農家になったきっかけです。

パイン1個つくるのに、どのくらいかかると思いますか? 2年かかるんですよ。これが300円とか400円。今、キャベツが300円くらいするさ。大根とかキャベツとかレタスは、3カ月、4カ月です。ぞっとしないですか? おいしいんだから自信をもってそれなりの価格でなんで売れないのかな?


わんさか大浦パークで「売るだけでは意味がない」と考えている藤原さんは、僻地という悪条件のなか、料理人とコラボした商品開発や、わんさか大浦パークとともに販売ルートづくりを試みています。


藤原さんが地域を熱く思う理由は、自らが育った那覇と名護東海岸の環境があまりにも違ったからでもあります。

こっちに来た時、地域の青年会の一回りも下くらいの子なんかが、自分がびっくりするような意識の高い話をしているわけですよ。那覇の人は自分の生活を守るために精一杯で余裕がない。隣の人が誰なのかもわからない。自分は子どもが5名いるんですけど、こっちではみんなが子どもたちのことをわかっていてくれるのがありがたいんですよね。地域で育てられる環境がある。いろんな人と話できるから、いろんな体験とか吸収がある。年下の人も尊敬してるし、こんなふうに歳をとっていきたいなっていう見本になる人もいるんですよ。


おじぃ、おばぁが、野菜を出荷し、集まってお茶や会話もできる場所。


一方、同じ畑人でも、名護東海岸で育った野原三喜郎さんと名護の市街地出身というシマ子さん夫婦は「よそから来た人ががんばってくれているのに、地域の人がそれをなかなか感じとっていない」はがゆさを抱えています。

シマ子さん この地域の人は名護市街の大きいスーパーで買い物をして、わんさか大浦パークに寄らないで帰ってきてしまう。みんな地域がこうなってほしいというのはあるけど、わんさかまで足を運ばない。


でも、地域の人が気づくきっかけになればと思いいつも「むしゃむしゃ動いている!」と笑う二人は、わんさか大浦パークの立ち上げメンバーでもあります。


50歳で脱サラをして畑人になった三喜郎さんと、名護の街育ちではあるものの、農業試験場で働いた経験があり、虫や星や動物が好きだったというシマ子さん。
「儲からないから辞めたらー?といつも思いながらも、また翌日には平気な顔をして」畑に出ています。
そんな二人のもとで育った娘・みのりさんはこの地で農業レストランを起業したいと、今は農業修行中。緑肥を使った自分の畑をもっています。


野原家はゴーヤーとキュウリ、ナスをメインに、8~10種類の野菜を育てています。

三喜郎さん 僕のなかではわんさかは専業農家のための出荷場じゃないんですよ。地域の人たちがまかなえない部分を僕たちがカバーしますよという感じ。キュウリなんか曲がっているのを安くわんさかに出すけど、他の人たちがキュウリがいっぱいあるといったら自分たちの野菜は引く。70代以上のおじぃ、おばぁが、野菜を出して、集まることもできるし、お茶も、会話もできる場所。この地域の人は幸せそうに暮らしているんだなーって思われるようにしたい。


二人にとって、村おこしNPO法人ECOFFの学生ボランティアとの出会いも大きかったようです。

シマ子さん 受け入れはじめたら、みんなおりこうさんばっかりで、いろんな子と知り合って…。(わんさかが大浦パークができてから)若い子たちが気軽に顔を出しやすい状況になって、がんばっている子が片足を着けるようになってきているのはものすごくいいなー。彼女たちがあっちこっち行って活躍できるようにいろんなことを考えるわけさ。今、活躍しているのを見て喜んでます。