久志地域の「沖縄(ウチナー)タイム」がここに。100年使えるすすきのほうきづくり

2021.12.08

「沖縄(ウチナー)タイム」という言葉を聞いたことがありますか?
「時間がゆったりなこと」や約束の時間に「遅刻しちゃうこと」というイメージがありませんか?
もちろん、そういった意味もあるかもしれません。
今日は久志地域に流れる時間の中で、「沖縄(ウチナー)タイムってこういうことなのかも」と思った一部をお伝えします。

地域に伝わるものづくりの技術や文化、暮らしの知恵を学び、伝える「ものづくり講座」


NPO法人久志地域観光交流協会では、沖縄県名護市東海岸の久志地域で、地域の方々が主体となった民泊や体験プログラムを実施しています。
その中で大切にしていることが、「自分たち自身が久志地域のことが好きで、だからこそ、人に伝えたい!」という気持ちです。

この「ものづくり講座」では、地域に昔から伝わる大切なものづくりの技術や文化、暮らしの知恵を改めて学び、伝えていくために実施しています。
平成25年から実施していて、合計12回。
今回のお題は「100年使えるすすきのほうきづくり」です!

100年使えるすすきのほうき


これ、どうやって作ったと思いますか?
すすきのほうきと聞いて「あのよくあるすすきをとって束ねて縛っただけでしょ?」と思いました?

正解!その通りです。
とって束ねて縛っただけです。

でもこのほうきを作るだけでも、とても時間をかけています。
今日は以前「久志の民泊」受入メンバーと一緒に実施した時の、
講座を実施するまで、実施中、実施後のお話をしたいと思います。

▼久志の民泊 とは
https://kushinominpaku.com/

すすきのほうきを作るために その①すすき集め

 
まず、すすきを取りに行きます。
材料集めはこれだけ。簡単でしょ?
でもこれがなかなか大変。

私たちのものづくり講座の目的は、学ぶだけでなく「伝えること」も含んでいます。
そのため、材料集めから自分たちでやります。
という訳でものづくり講座実施日の前にすすきを取りに行きました。


ちゃんと取る時期もありまして、
ある程度穂がないとダメだし、ありすぎると種がとんでしまってほうきづくりに向きません。
また雨上がりだと湿ってしまって茎が腐ってしまいます。
取る時期が遅すぎると茎がポキポキ折れてしまいます。
今の時期!という絶好のタイミングに取らないといけないのです。


仕事があった私ですが、その今!というタイミングを逃してはならなかったので、「久志の民泊」のメンバーとすすきを取りに行きました。
こうした時間の過ごし方も、沖縄タイムなのかも。

久志地域の大浦区ですすきを収穫している様子


たくさんあるように見えて一本一本の穂は少ないです。大量に集めます。

集めること約1時間。場所を変えながらもくもくと集めます。

この日はとっても寒くて大変でしたが、今を逃してはならなかったのです。
自然にはサイクルと時期があるのです。
人間の都合に合わせてはくれません。
沖縄の人はそれを分かっているようです。

すすきのほうきを作るために その②乾燥させる


この後このすすきを広げて乾かし、乾燥させます。
その期間はだいたい1週間くらい!
「え~せっかく取ったのにすぐ作れないの!?」と思ってしましましたが、
「楽しみはとっておくものよ~」と地域の方に言われました。
こういう急がないところも沖縄(ウチナー)タイムなのかも。

そして、本当に大変なのはここからです… 
1週間後、いよいよものづくり講座開催です!ほうきを作ります!!

ものづくり講座の講師 島袋正敏さん

すすきのほうきを作るために その③かさちゅん、さばちゅん


いよいよほうきを作ります、いやずっと作るまでの過程ですが。


まず行うのが「かさちゅん」です。
方言です。かわいいでしょ。
「葉っぱをとる」という意味です。

なんと!この一本一本のすすき、何枚かの葉で覆われており、
それを一本一本上の写真のように見ながら「かさちゅん」するのです…なんと気が遠くなる作業。
でもこの時、講師の島袋正敏さんから名言が。

「こういう下ごしらえの時間を楽しむんだよ~豊かな時間でしょ~」


あ、これが沖縄タイムなのかも。

ゆんたくしながらかさちゅん(葉っぱをとる)する様子


ゆんたく(おしゃべり)しながら黙々と作業します。
この日はぽかぽかであったかい日でした。
わんさか大浦パークのBGMで流れる民謡をみんなで口ずさんだり、思い出話をしたり、方言の話で盛り上がったり。

昔はほうきづくりが学校の宿題だったよ。すすきだけじゃなくて稲藁でもよく作っていたよ。昔は稲作が盛んだったし、2期作だったから稲藁がたくさんあってね。作ったのものを学校で使って、壊れたら直す。その繰り返しだったよ。

このほうき、どの家にもあったよね。台所や玄関を掃くの。昔はどの家も土間があったからね。

おばぁが畑仕事をしながら、こういう歌(BGMで流れていた民謡)を口ずさんでいたよね。手伝いながら聞いてたから、歌も覚えてしまうんだよね。

このゆんたくしながら手を動かす時間は、本当に豊かな時間でした。

さばちゅん(櫛を通す)する様子

かさちゅんの次は、「さばち(櫛)」で「さばちゅん(櫛を通す)」しますよ~。この「さばち」は「はーもー(歯がない・ここでは櫛の歯が欠けているという意味)」ですね。「は~も~」とため息つかずに頑張りましょう!

こんな方言ジョークも出ながら、楽しくさばちゅんします。

「さばち」は首里方言だね。僕の島方言(久志地域の久志区の方言)では「さわぎ」って言うよ。だから「さばちゅん」も「さわちゅん」だね。島(集落)ごとに隣り合ってても言葉が違うんだよ。

ほうきを作りながら方言も学べちゃう。とても楽しい時間でした。

すすきのほうきを作るために その④選定する


下ごしらえが整ったら、いよいよ束ねて縛るのか!?と思いましたが
「まだまだ~」と。
その前に選定をします。
同じ長さのすすきを集めます。

さっきまで下ごしらえしたものすべてが自分の物ではなく、みんなの物を集めて長さを統一します。
だいたい短いものたち・中くらいのもの・長いもの。
3つくらいに分けてその中で自分に丁度いいものを作ります。
たくさんのすすきをまた一本一本分けます。
雑に扱うと折れます。丁寧に丁寧に。

すすきのほうきを作るために その⑤束ねる


いよいよ束ねます!ここからはあっという間でした。
ぐるぐるぐるぐる~っと円を作って通して引っ張る。
これを3回繰り返します。ほんの10分~15分で終わりました。
でもやっぱり紐の縛り方ひとつで雰囲気が変わります。


そして完成しました!作るのは簡単、その前の時間がとても大変でした。
でもまだこの後があります…

すすきのほうきを作るために その⑤使う

数日後、一緒に作った久志の民泊のメンバーから「ほうき使った?余計ゴミが出たでしょ~」と言われました。
ほうきで掃除するのに余計ゴミがでるってどういうことか?
そうです、すすきの穂がぽろぽろ落ちてくるのです!!!

作ってすぐに家で使うと「掃除してるの?散らかしてるの?」と言われるほどです。
「作り方が悪かったんですか?」と聞くと、
答えは「使えば使う程、余計なものが落ちてしっかりしたほうきになる」とのことでした。
このすすきのほうきは使い続けるまでがほうき作りの一環だったのです。

ものづくり講座で製作したほうきには、フクギの葉っぱでネームプレートを付けました。


こんなに時間と手間がかかったすすきのほうきですが、
なんと100年近く使えているすすきのほうきもあるとのこと。
こうして時間をかけるからこそ長い時間使えるものになるようです。

お店に行けば安価で買えるほうき。
今回かかった経費は縛った糸代だけです。
こちらもお金はかかっていませんが、時間と手間がかかっています。
そして長い間使える知恵も、ここにはあります。
こうした時間を楽しむこと、大切にすることが沖縄タイムなのかもしれません。

INFORMATION

2019年に実施したものづくり講座「100年使えるすすきのほうきづくり」の様子

2年ぶりに、ものづくり講座「100年使えるススキのほうきづくり」を開催します。

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開催日時:2022年1月14日(金)10時~12時
場所:わんさか大浦パーク(沖縄県名護市大浦465-7)
定員:10名
参加費: 2,500円
お申し込み:事前予約を必須とします。
電話又は申込フォームにてお申込みください。
お名前、ご年齢、ご住所、ご連絡先をお知らせください。
お申し込みフォームは ▶▶こちら

※新型コロナウイルス感染拡大防止の観点より、
体調不良等の場合はご参加をお断りする場合がございます。
予めご了承ください。

▼主催・問い合わせ先
NPO法人久志地域観光交流協会・名護東海岸アグリプロジェクト
電話番号:090-9785-7832 
メール:info@kushinominpaku.com
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