手間を楽しむ豊かな時間を過ごそう。久志の手しごと始まりました。

2021.11.08

「手間」という言葉には、「手間がかかる」というような、少し大変なイメージがあるかもしれません。

沖縄県名護市東海岸の久志地域には、そんな「手間」を「楽しむ」ことを通して、「豊かな時間」を過ごしている方々がいます。

久志地域の底仁屋区にある、黙々100年塾蔓草庵の島袋正敏さん。

「ぼくの小学生の頃は、ススキでほうきをつくるのが宿題だったよ。宿題で作ったほうきを使って掃除をする。壊れたら直す。その繰り返しだったよ」


そんなお話を伺って、「ものづくり講座:100年使えるすすきのほうきづくり」を開始したのが平成25年。
地域には見渡す限り、川沿いを中心にたくさんの”すすき”があります。


講座のためにたくさんとっていると、通りがかる人に「いったいこの”すすき”で何をするの?」と聞かれることが多くあります。
普通の人から見たら、ただ雑草をとっているだけかもしれません。
しかし、ものづくりの視点で身近にあるものに目を向けると、宝物がたくさんあります。

100年使えるすすきのほうきづくり講座より。

地域に根付くものづくりを子どもたちへ


地元の公立小中一貫校「緑風学園」では、ふるさと学習の一環で、毎年「ものづくり講座:草玩具づくり」を実施しています。
その講座で、講師を務める地域の方がお話しするのはこんなこと。

「遊び道具なんて、その辺の草だったよ。おもちゃなんてないからね。身近な生き物を葉っぱで作ってみる。作り方なんてきまってないよ、全部自己流だよ。それが遊びのひとつだからね」

マーニー(クロツグ)の葉で作られた草玩具たち。

小学3年生は、初めて作る子ばかり。
最初は「できない~」「分からない~」という声が多くても、徐々に集中して作り始め、最後には独自の方法を考えて作る子も出てきます。
1度作ってみると、「もう一回!」という声が止まらず、講座の後は材料のマーニー(クロツグ)の葉っぱを持って帰る子が多くいます。


あるもので楽しむ、工夫する。ちょっと違うことをやってみる。失敗しても、もう一回挑戦してみる。
「創造する力」、「生きる力」って、こういうところにあるのではないでしょうか。

緑風学園のふるさと学習での、草玩具づくり。

伝統を守ること、新しい風を吹かすこと。

「わたしの作品は、主役じゃないの。そこにあるだけで周りを明るくしたり、ちょっと元気ができたり。そこがいいでしょ。」

てぃちな工房さんの漆喰シーサー。

元々シーサーは「魔除けの獅子」。
シーサーって、こんな風に使うもの。こんな顔をしているもの。
そんな固定概念を取っ払ってくれるような表情と形をした作品たちです。


使われいる材料は、漆喰(しっくい)。
漆喰は、石灰に藁や水などを混ぜて練り上げ、沖縄の伝統的な建物である赤瓦屋根の接着剤としてとして使われていきました。

こんな風に昔の人たちの知恵を生かして、新しい考えを取り入れながら、作品作りをされている作り手さんがいます。

表情豊かな漆喰シーサーの作品たち。

こうしたものづくりをしているおじぃ、おばぁがいる地域は、もしかしたらどこにでもあるお話かもしれません。


しかしながら、久志地域では「久志の手しごと」として竹細工や月桃編み、草編み、漆喰シーサー、ガラス細工、草木染めなど、
多様な種類のものづくりをしている方々が、グループになった活動が動き出しています。


その始まりは、地域に暮らしている若い方々の声からです。

「身近にあるもので作れるなんて素敵だよね。魔法みたい。こんなにたくさん材料があるんだから、なんて豊かな地域だろうっていつも思ってるよ。」

汀間区の伝統行事「綱引き」の綱づくりの風景。地域の方々で縄を綯い、作られています。

「綱引きの時も、おじぃおばぁが簡単に編んでる縄。これってところによってはすごいことで、かごバックになったら素敵!」

近くに生えていた蔓を使って、ゆんたく(おしゃべり)をしながらさっとこんなかわいいカゴが。

「地域の先輩たちの技や考え方。ものづくりの技術だけじゃなくて、そういう生き方を大切にしていきたい。それも地域の魅力のひとつ。」

2020年11月に実施した「風と緑のちいさなクラフトフェア」の風景。

「ものづくり」って、1人で黙々とやっていくもの。
だけど、たまたま同じ地域に暮らしていて、同じ風景の中でものづくりをしていて、
世代を超えた、分野を超えたコラボレーションができたなら。
そんな風に「新しい風」が合わさることで、
地域に根付く文化や伝統を引き継いでいく目的に向かって進んでいけたら、と思っています。

「伝統を大切にすること、新しい風を吹かすこと」

これも、地域の方の言葉です。
まだまだ手探りではありますが、こうして始まった取り組みが「久志の手しごと」です。

【手間を楽しむ豊かな時間を過ごそう】

沖縄県名護市東海岸の“久志地域(くしちいき)”という小さな村で
日々の暮らしを丁寧に営む地域の方たちが
“手しごと”をしています。

私たちの“手しごと”で大事にしていることは、
「歩を共に」
「丁寧に」
「想いを込めて」

地域に伝わる暮らしの知恵を、
ひとりではなく、
みんなと一緒に繋がりながら学び、伝えていく。
そうしてみんなが地域での暮らしを楽しみ、誇れるように。
そんなことを考えながら暮らしています。

買ったら何でもそろう時代ですが、
地域にある自然の恵みを材料とし、
自分で時間や手間をかけて作るからこそ、
気持ちのこもった“特別なもの”に変身してしまう。
それが“手しごと”のおもしろさです。

伝統を大切にすること、そして新しい風を吹かすこと。
“手しごと”を通して地域の活性化につなげていきたいと思っています。

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「久志の手しごと」
▼久志地域の直売所「わんさか大浦パーク」にて、
「久志の手しごと」商品展示販売コーナーを設置しています。
https://wansaka-o.jp/

▼WEBショップはこちら
https://kushinavi.buyshop.jp/

▼「風と緑のちいさなクラフトフェア」についてはこちら
https://nago-east.com/person/1080



文責:NPO法人久志地域観光交流協会(坪松美紗)