伝統行事がすごい。名護東海岸「久志地域」の魅力。【後編】

2022.02.20

【前編】につづき、筆者(茨城県出身)が、久志地域の伝統行事すごい!と思ったことを伝えていきたいと思います。

伝統行事がすごい③数が多い。

思いついた大きな行事をざーっとあげてみただけで、毎月何らかの行事がありました。


4月:清明祭(方言で言うとシーミー)…ご先祖様のお墓に親戚が集まって、お線香やお花、重箱料理をお供えして供養をするお祭。
沖縄の人はお墓の前でピクニックをすると聞いたことがありますか?それです。
あるお墓にはこの日のために水道とガスがひかれているとか。すごい。

5月(旧暦の4月):悪虫払い(方言で言うとアブシバレー)…その名の通り悪い虫を追い払う行事。
畑や田んぼの農作物につく虫を払うことで、豊作祈願をします。
具体的にやることは、害虫を葉っぱで作った船に乗せて海に流します。

アブシバレーで虫流しをしている様子(嘉陽区)


6月:ハーリー大会…ハーリーと呼ばれる沖縄の伝統的な船を10名程で漕ぎ、競争する大会。豊原区や辺野古区では集落単位で大会が開かれています。辺野古区では方言でハーレーと呼ばれています。

7月:綱引き…沖縄のお米は7月に収穫できます。その収穫された稲をつかって綱を編み、大きな綱で綱引き大会を行います。
この行事では、綱づくりから始まります。
辺野古区や汀間区では綱引きの際に松明(たいまつ)に火をつけて「ガーエー」が行われています。嘉陽区では、集落を西と東に分けて砂浜で綱引きの対抗戦を行います。

綱引きの綱をそのまま円形にして、角力(相撲)が行われる地域もあります。
辺野古区では角力相撲はアブシバレーと同じ時期に行われます。

角力相撲は、小さい人が大きい人に勝つのが特徴。チカラじゃなくて、技で勝負する。柔道とはまた違った駆け引きが、この相撲にはあるんだよ。

と地元の方に教えてもらいました。


8月(旧暦のお盆):豊年祭…五穀豊穣を神に感謝するお祭り。【前編】に記述した通り、すごいです。

9月:ウシデーク…健康や豊作を祈願して女性が踊るお祭り。漢字で「臼太鼓」と書くだけあって、BGMは太鼓のみ。嘉陽区では8~9曲を歌いながら踊ります。

昔はね、歌をわざわざ覚えたりしなかったよ。田んぼとか畑の作業をしながら母親たちが口ずさんでいたからね。自然と頭に残って覚えてるんだよ。

ウシデーク(嘉陽区)

11月:二見情話大会…二見区という集落を唄った民謡があります。
その民謡を出場者が歌うという行事が二見情話大会です。
毎年20組近い出場者がいて、歌・三線・衣装・ペア度で審査員がポイントを付けて、大賞を決めます。
地域の人、地域外の人、小学生から90代のおばあまで、みんな歌える、愛されている民謡です。

二見情話と二見情話大会についてはこちらの記事をご参照ください。
二見情話の里。 大切に唄い継がれる理由。

12月:忘年会…【前編】で記述しましたが、朝から夜まで1日かけて忘年会をします。
ある集落では「忘望年会」と表記していました。
悪いことは忘れて、希望にあふれた年にしましょう、ということらしいです。
こういうところが沖縄らしいです。

1月:ドウドイ…久志区という集落にはドウドイという、子宝祈願のお祭りがあります。
男性が太い木の上に跨って乗り、それを担いで集落の公民館まで練り歩くという、なんとも特徴のあるお祭りです。

2月:旧正月…沖縄の行事は全て(といっても過言ではないほど)旧暦で日程が決まります。
カレンダーは旧暦が入っているものがほとんど。
「旧正月だから…」と予定が入れられないほど、沖縄にとってのお正月です。
親戚が集まったりお墓参りをしたり。
1年の平穏を祈願する川拝み(かわうがみ)もこの時期に行われます。
沖縄と言っても2月は寒いです。
寒い中、外の川沿いでおばあたちが拝みをします。伝統的な行事を大切にしている姿が見られました。

2月には自慢品評会もあります。何をするかというと、地域の方々が作った野菜や民芸品を持ち寄って、みんなに披露する会です。
「この大根上等ね!」「大きさはこっちだけど、形の面白さはこっちね!」
などなど、「毎年これが楽しみでやってるよ!」という方もいるほど。
この行事は地域の方々の生きがい、やりがい、楽しみとなっています。

品評会の様子(汀間区)

3月:フラワーフェスティバル…2012年から始まった久志地域のフラワーフェスティバル。わんさか大浦パークを中心に、さまざまなお花に関するイベントが行われます。


新型コロナウイルスの影響により2年間中止となっていますが、
大人気企画のオープンガーデンでは、地域で暮らす方々が

イベントは中止でも、お花がたくさんあったら元気が出るからね

と言いながらお庭づくりをされています。
イベントだから、ではなく、普段の暮らしにお花があって、お庭づくりを楽しんでいます。
暮らしに根付いた素敵な風景が残る、久志地域です。

オープンガーデンについてはこちらの記事をご参照ください。
春香るやんばるの里【前編】

この行事や地域一体で行う沿道の美化作業で、「やんばるの景色とお花のある暮らしが素敵!」と好評をいただき、
2020年度には魅力的な地域づくりとして国土交通省の「手づくり郷土賞」を、久志支部区長会が受賞しました。

地域の皆さんで受賞できたこの賞は、地域活性化の取り組みのひとつとなっています。

このように沖縄には伝統行事が多くあり、特に久志地域には集落ごとの伝統芸能が大切に継承されています。
その伝統行事の意味を知ると、沖縄の人々が自然と共に暮らしてきた背景がよく分かります。
また、久志地域の行事をあげてみたら、伝統行事だけでなく近年始まった年中行事が多いことが分かりました。
どの行事も地域の人と人、人と文化、人と自然がつながる大事な行事です。

こういった行事は、久志地域外に住んでいる出身者と、住み続けている人がつながる機会になっていたり

行事の中で役割があることで地元の人も移住者も出番や居場所ができて、つながりが深まっていき

子どもや若者たちのアイデンティティが育まれる機会にもなっていたり

様々な役割を持っていると思います。

久志地域ではこのように「伝統を継承すること」が「地域の未来をつくっている」と感じています。

わんさか大浦パーク代表 深田友樹英さん
「長者の大主」の演目に出演する深田友樹英さん(写真左)

県内で多くの伝統行事が、時代の流れと共に淘汰されていく中で、なぜ久志地域では継続しているのか?
例えば大浦区では、20年以上途絶えてた村踊りを復活させる、という動きがなぜ起きたのか?

そういったところに視点を当てると、地域づくりや地域の持続性と伝統行事が、とても深いかかわりがあることが分かります。

嘉陽区の獅子舞


沖縄に移住してもこんな風に集落の行事に関わる機会がない方も多くいると思います。
田舎だからこその良さ、大変さもありますが、こうして地域の今の世代と過去の世代とこれからの世代ともつながることのできるのが伝統行事。
そしてこの行事を支えるのは「人」です。
久志地域は過疎高齢化が進む地域ですが、行事を通して地域の方々が繋がり、楽しみを共有しながら暮らしている地域だなと感じています。